当社は1997年に創業しました。
アジア通貨危機があった年です。
それまでは日本国内の翻訳需要は極めて多く、供給が追い付かない状況でした。
しかしアジア通貨危機以降、日本の多くのメーカーの海外進出が一時的に止まり、翻訳の仕事は激減しました。当社にとって創業直後の経営危機でした。
「翻訳会社を創業したが、果たしていつまで続けられるのだろうか?」
と、不安な気持ちになったのを今でも鮮明に覚えています。
しかし、幸運なことに1990年代後半は世の中にインターネットが普及し、あらゆる分野でインターネットを活用したビジネス展開が始まっていました。
そこで私たちもインターネットを最大限活用した営業活動や業務の効率化に努めました。
1. ホームページ開設による会社の認知度向上
2. 定期的なメールマガジンの発行による見込み顧客の開拓、協力していただくフリーランス翻訳者さんたちとの信頼関係構築
3. 受注した翻訳の仕事を効率的に社内処理するためのWEBを使った受注業務管理システム(効率課長)の構築と有効活用
などなどです。
これらの活動がどの程度効果があったどうかデータで表すのは難しいですが、2000年ごろには翻訳の受注量は当初の目標以上に増え、活気ある会社になることができました。
今から考えると上記3つの活動のうち最も効果があったのは3の効率課長の導入でしょう。効率課長のおかげで多くの受注を効率的かつ正確に処理することができ、会社の生産性と信頼性が大きく向上しました。
この「効率課長」はのちにパッケージ化し、多くの同業社様にも購入していただき、今でも日本の各地で元気に活躍しています。
しかし近年、翻訳の受注は再び減少し、翻訳業界自体の存続が危ぶまれる状況になってきました。
理由は複合的です。
1. 日本のGDPの伸び悩みに象徴される総体的な国際競争力の低下
2. 新型コロナ禍における企業活動の低迷
3. AI翻訳の普及による、企業様からの翻訳発注量の減少、です。
2020年度の翻訳通訳白書(一般社団法人 日本翻訳連盟)によると昨年の日本の翻訳会社の受注量は大幅に減少しています。さらにこのデータは新型コロナ禍の影響を受ける前の数値(2020年の決算の数字)と思われるので、現在はさらに減少していると想像できます。
減少する需要の中で翻訳会社がどのように生き延びていくのか、が問われています。
私は「高品質サービスの継続的な提供」が唯一のキーワードだと思っています。
たとえ翻訳需要が低下しても一定以上の需要は残ります。一定の需要が残る限り、一定の翻訳会社と翻訳者は生き残ります。
高くなるお客様の期待に応えられない会社・翻訳者は市場から退場しなくてはなりません。
翻訳の仕事での「高品質サービス」とは何でしょうか?
ミスが無い、正確で使いやすい翻訳文書の提供はもちろんですが、加えてお客様の疑問やご
要望に丁寧・親切・スピーディーにお答えする対応が必要です。
翻訳原稿には時々ミスがあるケースもありますが、そのようなミスを丁寧にピックアップし、報告・修正してビジネスツールとしてのドキュメントのレベルを上げるお手伝いをすることなども含まれます。
翻訳業務の全体的なサービスのレベルをさらに上げ、継続する努力が必要です。
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