意地悪な翻訳チェックで品質アップ

当社が1999年に発行した翻訳参考書である「プロの技術翻訳者になろう! ~稼げる翻訳者になるためのノウハウ~」の中にある記述のうち、当社内では常識であり徹底していることであるにもかかわらず、世間的にはそれほど認識されていないのではないかと思われる事項がありますので、ここで改めて加筆修正しながら紹介します。


1. 一文ごとに翻訳、一文ごとにチェック


翻訳作業の進め方は、一つの文章を読んで内容を把握したらすぐにその内容を訳し、その直後にその訳文を自分でチェックする方法が望ましいです。このとき、自分が作った訳文が原文の内容以外の意味に解釈される可能性がないことを確認します。


複数の分を読んで全体を把握した後で訳すと内容の漏れや不正確さが生じる可能性が高くなります。


瞬間的な人間の頭のメモリー量はそれほど多くないので、細切れに情報を処理していく方が確実に正確な翻訳ができます。また、自分が作った訳文はなるべく翻訳直後にチェックしないと、原文の意図する内容が頭から消えてしまい、正確なチェックが難しくなります。


よって翻訳作業の基本は「原稿の一文を読んだらまずそれを翻訳する。そしてすぐにチェックする。そして次の文章に取りかかる」です。


でもそうすると文章間の流れがぎくしゃくして、読みづらい訳文になってしまうと思う人も多いかもしれません。しかし、文章の流れを整える作業はある程度翻訳が進んだ後で(1パラグラフ位で)やる方が効率的です。最初から文章のスムーズな流れを意識し過ぎると原文の内容から離れてしまいがちです。


ベテランになると一文ごとに訳しても全体として調和がとれ、スムーズな流れの翻訳文が出来るものです。多くの経験を積んで早くこの境地に達しましょう。


2. 訳文が原文以外の意味に解釈される可能性がない翻訳


翻訳の初心者は原文の内容を他の言語に正しく訳す(置き換える)ことに精いっぱいで、訳せたら安心してしまいます。しかし一番大切なのは自分の作った訳文を他の人が読んでも、必ず原文の内容を正確に理解してくれることです。日本語でも英語でも、文章の作り方によっては複数の解釈が可能になることがあるので注意が必要です。


自分で作った訳文を少し意地悪な気持ちになって見直しましょう。


「この文章は自分が意図した内容は表現しているけど、異なった解釈も可能だ」と思ったら書き直してください。技術翻訳は正確さが一番大切、と言われる所以はここにあります。

多くの場合、用語(特に前置詞)の選択、カンマの位置、文章構造の見直しで解決できます。


日本語にしても外国語にしても、上手い人の文章は読み進むとなんの迷いもなく、内容や状況が即座に頭に浮かんできて、どんどん読み進むことができます。書いた人が意図する内容以外に解釈される恐れのない、明快な文章だからです。


翻訳も同様です。自分勝手な文章では読む人を納得させることができないのです。


翻訳会社トランスワード 社長のブログ

当社は広島を拠点にする、自動車を含む工業技術分野を得意にする翻訳会社です。 このブログでは1997年の創業から現在に至るまで、翻訳会社として良いサービス提供のために考えてきたこと、実行してきたことをまとめます。 また、海外出張などで経験し、興味深いと感じたことなどを随時お届けします。 株式会社トランスワード:https://www.transwd.com/

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