韓国の翻訳会社 3.社内の翻訳者の給料は出来高制が多い

一般的に翻訳会社が受注した仕事は社内の翻訳者と社外のフリーランス翻訳者に振り分けられ、その比率は各会社の経営ポリシーによって異なります。


ここでは受注した翻訳の仕事を社内翻訳者でこなす場合の社員の給与形態について考えてみます。


日本の場合、社内スタッフの給与は月給または時給で支払われるのが普通です。しかし私が接触した多くの韓国の翻訳会社では、仕事の質と量を掛け合わせた出来高制(成果給)で支払っています。


出来高制は一見、その人の仕事のレベルと量に応じた給与が支払われ、フェアーな給与体系だと考えられます。

しかし、会社経営の観点から見ると社員の能力アップ、そして会社全体としての実力向上の面で問題があります。


この制度では同じ会社で机を並べて働いている社員同士はライバルになります。先輩社員は後輩社員がレベルアップして自分より上の力をつけると結果的に自分の給料が減ってしまう恐れがあります。


このため仕事に関する自分のノウハウは他の社員に教えたがらない傾向になります。日本の会社で普通に行われているOJTによる先輩から後輩に対する教育が行われにくくなってしまいます。


会社としてはこれでは困るので、多くの場合、会社の経営陣が直接新人を教育するシステムをとっています。このため経営陣の負担は大きくなり、新人のスキルアップが十分になされない可能性もあります。


この点については韓国の翻訳会社経営者と話すとき、しばしば議論の的になります。一部の韓国の経営者は日本式の「先輩が後輩を指導する」システムが好ましいと思っているようですが、韓国の多くの社員は学生時代から慣れ親しんだ「周りの皆は自分のライバル」という考え方が抜けきらないため、実行するのが難しいようです。


「実力主義・成果主義」という言葉は最近日本でもてはやされる傾向があり、特に最近のコロナ禍でテレワークが一般的になると、さらに重要視される傾向が強まるでしょう。


しかし忘れてはならないのは仕事のスキルアップは自分の努力だけでは限界があること、それを打ち破るには高いスキルを持った先輩のノウハウを盗んだり、OJTなどを通じて教えてもらう必要があることです。


この点はテレワークがもてはやされている今の日本の会社の仕事の進め方を考える上での大切なポイントになるでしょう。



翻訳会社トランスワード 社長のブログ

当社は広島を拠点にする、自動車を含む工業技術分野を得意にする翻訳会社です。 このブログでは1997年の創業から現在に至るまで、翻訳会社として良いサービス提供のために考えてきたこと、実行してきたことをまとめます。 また、海外出張などで経験し、興味深いと感じたことなどを随時お届けします。 株式会社トランスワード:https://www.transwd.com/

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