翻訳をするためには語学力、専門知識、および翻訳知識が必要です。語学力は独学でも習得できます。専門知識は実務を通じて得るのが最も効率的ですが、自分で専門書などを読んで身につけることもできます。翻訳知識は残念ながらこれといった教科書がありません。部分的には専門雑誌などで紹介されていますが、十分ではありません。
翻訳知識とは一口に言って、「翻訳をする上での微細な約束事および体裁」のことです。いくら立派な文章で、かつ内容の技術レベルが高くても、約束事や体裁の守られていない翻訳文章は商品になりません。この約束事や体裁は分野によって異なるし、クライアントによって変わることがあります。また翻訳会社ごとに決めてあることもあります。しかしベースになる共通部分は変わりません。
技術翻訳の場合、新人がデビューするのが難しい理由は翻訳知識が乏しいことにあります。トランスワードは常時翻訳者を募集していますが、トライアル翻訳の合格者は多くありません。不合格の理由で一番多いのが「翻訳知識不足」です。また数少ない合格者に共通しているのは「しかるべき翻訳学校などで翻訳ルールをきっちり勉強している」ことです。
商品になる翻訳はそれなりの勉強をした人でなくてはできません。あらゆる機会をとらえて翻訳の知識を身につけてください。
上記は1998年に当社発行のメールマガジン内の「最近の翻訳業界」のコラムに書いた文章です。
当時当社は一般向けの翻訳教室を運営していました。教室で教えていた内容は上記の「翻訳知識」がほとんどです。この翻訳教室は1998年から約10年間継続し、多岐にわたる翻訳知識を生徒さんにお伝えしました。
また教えた内容は目的別・レベル別に本にまとめ、出版しました。今となっては10年以上前に出版した古い本になってしまいましたが、内容は基本的なことばかりであり、現在も立派に通用する内容だと思っていますので、今でも販売を継続しています。
トランスワードが出版した数ある翻訳参考書のうち、一番のおススメは「技術翻訳基礎コース、翻訳課題解説集」です。
当社の翻訳教室では、多くの翻訳課題文(短文)に対し生徒さん全員が翻訳文を提出し、それを講師が講評しながらベストと思われる訳文を皆さんで作り上げていくという形式を取っていました。
一つの翻訳課題文に対し生徒さんの数ほど訳文が出てきますので、それらを一つの「ベストと思われる訳文」に収束させるのは容易なことではありません。生徒さんは皆、自分の訳文がベストだと思っていますので議論百出です。
そこで講師は「英文テクニカルライティング」の基本的考え方、ならびに過去のお客様コメントやそれを受けての当社が到達した訳文の話などを交えながら細かく解説し、生徒さんの納得を得ながらベストだと思われる訳文を作り上げます。
この「技術翻訳基礎コース、翻訳課題解説集」はトランスワードが作ったというより、当時の生徒さんたちと講師が共同作業を行いながらまとめたノウハウ集であると言えます。
一押しの書籍ですので、機会があればぜひともご一読いただけると幸いです。
技術翻訳を学ぶ人のための翻訳の本屋さん【翻訳参考書マーケット 】
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