翻訳会社の翻訳作業は社内でやるべきか、または外注すべきか。
1.今では翻訳作業は社外フリーランス翻訳者に外注するのが主流
近年、日本国内の翻訳会社ではほとんどの翻訳作業を外注し、社内では営業・受注活動、翻訳後のチェック作業、一部の編集作業と請求作業など、周辺業務だけをやるという事業形態が主流になっています。
業界内では自社を「翻訳会社」ではなく、あえて「翻訳エージェント」と名乗っている会社もいるくらいです。
確かに翻訳会社にとって、変動する仕事量に賢く対応するには人件費を含む社内固定費を少なくし、翻訳作業そのものは外注するのが賢明な経営手法です。この方法は固定費が比較的多くかかる傾向がある首都圏の会社にとって、今ではいわば常識になっているようです。
2.翻訳しない翻訳会社の問題点
日本で翻訳会社を経営するためには、確かに「翻訳しない翻訳会社」になるのは避けられない道かもしれません。しかしこの方法で翻訳会社として活動していくと長期的に見て様々な問題点が懸念されます。
① 翻訳する技術と周辺ノウハウが翻訳物に反映されにくい
それぞれのお客様ならびに翻訳会社には品質を高めるための種々の知識・ノウハウの蓄積があり、これらは常に最新化され、改善され続けなくてはなりません。
翻訳会社としては品質を高めるために最大限の努力をしますが、翻訳作業を外注してしまうと細かい点が社外の翻訳者に伝わりづらくなり、結果として品質低下を招く恐れが生じます。
② 新人翻訳者の育成が困難
翻訳会社が社内で翻訳作業を行っていた時代、経験のない翻訳者志望の人も翻訳会社に就職することができました。翻訳会社内には翻訳作業そのものだけでなく、翻訳前の事前作業、翻訳後の単純なチェック作業、翻訳文の編集作業など、周辺業務も多くあります。
翻訳会社に入社した新人は主として習熟度をあまり必要としない周辺作業をしながら、先輩を見習って翻訳者としてレベルアップします。
しかし翻訳会社が社内で翻訳しないのであれば、新人が入り込み、時間をかけて成長する機会がありません。今の翻訳会社が欲しているのは即戦力の営業担当者、即戦力のチェッカー、即戦力のコーディネーター(プロジェクトマネージャー)です。
社内で翻訳者を育成するシステムと余裕がないのが現状です。
③ 顧客からの急な要望に応えづらい
例えば大切な顧客から「300ページの翻訳を3日で仕上げてほしい。」という依頼が来たとします。300ページだと通常一か月以上の納期をいただくのが一般的です。
翻訳作業を社外に依頼している翻訳会社にとって、3日ではまず不可能です。6~7人の優秀なフリーランス翻訳者が必要になりますし、翻訳後の品質チェック作業のための社内での時間も必要ですので、要望に応えることができません。
しかし社内に優秀な翻訳者とチュッカーを抱えていれば、不可能ではありません。納期的に余裕のあるほかの仕事を一時中断し、同時並行で6~7名の翻訳者と数名のチェッカーが作業を進めれば可能でしょう。その顧客に対する注意点やルールなどは既に社内で共有されており、最低限の社内コミュニケーションをとりながら作業を進め、仕上げることができます。
このように、翻訳作業を社外に依存すると顧客からの急な要望に応えづらくなります。
3.翻訳する翻訳会社の利点と問題点
上記の「翻訳しない翻訳会社の問題点」を解決するのが利点です。
最大の問題点は、仕事量の増減にうまく対応できないことです。
仕事量が多すぎる時は一時的に社外のフリーランス翻訳者に協力してもらい、こなすことができます。
しかし社内の体制に比べ仕事量が少ない場合、大きめの社内コストを賄うための売り上げが立たず、経営が苦しくなります。
翻訳する翻訳会社にとって経営を安定させるために最も必要なことは、「受注する仕事量を一定に保つ。」ことです。
これは簡単なことではありませんが、最低限以下の二つの方針を立て、実現する必要があります。
① 安定した仕事量が見込める、業種の異なる優良顧客をなるべく多く持つ。
② 年間通して増減の大きい仕事はなるべく避ける。 ・・・・ことです。
ちなみに当社は「翻訳する翻訳会社」です。
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